「新金融連携によるスタート直後に・・」
(毎月の予実対比によりリスケ脱却し事業継続へ)
◆業種:ネジ製造販売、卸業 ◆規模:年商2億2千万円 ◆従業員12名 ◆所在地:大阪府
約10年間、リスケ(返済猶予)状態が続いており、解除する糸口が見えませんでした。しかし2019年1月に、これまで取引のなかった信用金庫から、日本政策金融公庫と商工中金との「金融連携」による1億5000万円の融資を受け、リスケをしていた約1億4000万円を全額返済。これにより正常先としてスタートすることができました。振り返ると約10年間のリスケ期間中は、パソコン1台購入するのもためらうほど厳しい状況でした。ただそうした中にあっても、会計事務所の支援を受けて「経営改善計画」を策定し、これを絵に描いた餅にしないよう、計画通り実行することが私の役割と心に決め、毎月の予実対比に徹底してこだわってきました。幸いにも会計事務所の監査担当者が毎月、当社の財務内容を監査し、その結果と併せて業績(計画)の進捗状況についてレポートしてくれます。この月次で締める体制(月次決算)を構築できたことが、倒産することなく今日まで続けてこられた最も大きな要因だったと考えています。やはり目標を下回る月が必ずありますが、その時は「要因がどこにあるのか、どうすれば翌月に挽回できるのか」を即座に検討し、決めたことは石にしがみついてでも実行することを徹底してきました。その思いだけで経営の舵取りをしてきたようなものです。その結果、リスケ中の10年間、一度も赤字になることはありませんでした。
ところがようやくリスケから解放された直後に、新型コロナの影響が会社を襲いました。そのさなかの4月、金融連携で融資を受けた信用金庫から、信用保証協会のセーフティネット貸付を特別に受けられる話が浮上。果たして増加する返済金額に耐えられるかを顧問税理士の先生に相談しました。顧問税理士からは、先行きが不透明な状況にある中、融資を受けるべきとアドバイスを頂き、4月中にセーフティネット貸付2000万円を実行してもらいました。その後、信用金庫とのさらなる交渉により、そのセーフティネット貸付をゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)に入れ替える手続きも完了。資金調達に余裕がある状態で今日も経営ができており、全面的に支援してくれた会計事務所の先生に感謝しています。
<会計事務所のコメント>
この関与先企業は、かつて「経営改善計画策定支援事業」の制度も利用した会社で、社長と共にバンクミーティングを開催してきました。常に金融機関の管理下で一円も真水の融資を受けることなく、約10年間耐え続けてきました。この10年間、社長と経営計画を策定し、一度も赤字にならなかったことに加え、社長の強い信念が金融連携という奇跡を呼び込んだと思っています。現在、新型コロナウイルスの影響で経営計画が非常に策定しづらい状況にありますが、目標のレベルを落とすことなく、つぎは次世代承継に向けての中長期経営計画策定を目標にして、現在の金融機関との連携をさらに強固なものにしていきたいと考えています。
※2020年8月20日日本経済新聞掲載